世界報道写真展2021:伝えたい問題意識を持つ/それでも世界は動いている
東京写真美術館で開催されている世界報道写真展に行ってきました。
世界報道写真展は1956年から始まった、ドキュメンタリー、報道写真の展覧会です。
今年は130の国と地域のフォトグラファー4,315人から計74,470点の応募があり、展覧会では約150点の入賞作品が展示されています。
写真が切り取った一瞬がどれほど強いインパクトを持つかに、驚きました。
私の得た新しい視点は2つ。
- 伝えたい問題意識を持つ
- それでも世界は動いている
1. 伝えたい問題意識を持つ
今年の大賞は、ブラジルのおばあさんと看護師がプラスチックカーテン越しに抱擁している写真です。
大賞に限らず、コロナに関する写真が多くありました。
一口に「コロナ」というとマスクをつけた群像や、病院で働く人々のイメージが思いつきます。
しかし、会場で取り上げられていたのは、
海底に沈むマスクとそれに興味を示すイルカでマスクを飲み込むことを環境問題として取り上げていたり、
長時間勤務された後のマスクの跡の看護師さんの顔を取り上げて、疲れた表情とマスクやゴーグルの締付けの強さで過酷な労働を伝えていたり、
異なる、かつ考えさせられる視点でした。
ただ漫然とカメラを構えていてもこのような瞬間は切り取れない。伝えたい視点があり、その問題意識と状況が合致したからこそ一瞬を切り取れると感じました。
自分で問題意識を持つこと、それが難しくてもせめて多様な視点に触れる機会をもつよう心掛けたいです。
2.それでも世界は動いている
コロナになってからすっかり家にこもりきり。ニュースにも触れず、海外旅行にも出かけられず、なんとなく世界が止まっているような感覚を覚えていました。
でもその間も、戦争は起きているし、パレスチナの人はイスラエルに収容されているし、ロシアのトランジェンダーは迫害を受け続けている。
世界ではたくさんのことが起きている。
ベクトルが自分と限られた世界にしか向いていなかったことに、気付きもしませんでした。
悲しいことばかりではなく、インドの水不足を雪解け水で解消するために、水柱を作る人々がいる。解説にそえられた「水柱の下に作ったアイスカフェの収益は、年配の人の巡礼に使われた」という言葉に、世の中の色んなところにきっとある善意に、目が潤んでしまいました。
色々なことを考えさせられる、とてもよい展覧会でした。
8/9までです。新しい視点が開かれます。ぜひ。