漫画の登場人物の悲哀、嫌いなキャラクターも作られている:BAKUMANを読んで。
今日「打ち切り寸前から大ヒットしたマンガ3選」という記事を読みました。
それで思い出したのが、BAKUMAN。
二人の同級生が人気漫画家を目指す&なってからの苦悩というストーリーの面白さもさることながら、少年ジャンプの漫画家さんの裏側を描いた功績が大きい。
アンケートによって打ち切りがすぐ決まる制度を知り、たびたび疑問を感じていた色んな漫画の急な方針転換の理由がわかりました。
最終回直前にしっちゃかめっちゃかになって「今までありがとうございました!」と急に終了するのは作者が新しい試みを色々試してたのか、と合点がいきました。
創作の裏側は面白くもいばらの道で、漫画家さんのお休みもない日々を思うと尊敬します。
しかし、私が一番衝撃を受け、考えさせられたのがアシスタントの中井巧朗氏の扱い。
肥満気味で長年アシスタントを続けてきた中年のベテラン。絵はうまいけど、ほれっぽく、美少女原作者の蒼樹さんとコンビを組むものの失恋し、その後コンビ再結成時に強引に交際を迫る・・・と、読者からしてみると「なんだ、この人?」というキャラクター。
一瞬、恋愛経験のほとんどない蒼樹氏とうまくいきそうになるのだが、性格の悪さを発揮し、嫌われてしまう。
それを見てちょっとほっとした。「だよね、蒼樹さん、ひっかかっちゃだめだよ」と。
でも・・・待てよ?
これで二人の仲がうまくいったら読者の多くが「え?このダメなおじさんとくっついちゃうの?」と疑問を抱いてしまうから、あえて中井さんの性格を悪く描いたのでは?
私たちはマンガや小説のキャラに感情移入して、「この主人公が勝ってよかった」「悪いヤツは成敗されないとね」と思ったりするけれど、その立ち居振る舞いには作者、ひいては読者を含む色んな人の思惑が絡んでいるのかもしれない。
そう思うと、自分の感情が操られているようでちょっと居心地の悪さを感じました。
どうも操られている感が苦手です。
読者としては面白い漫画が読みたい。方向転換で打ち切り直前からぐんと面白くなった漫画もあるから、多くの読者が求めるものを追求するのは大切。
でも自分の感じている気持ちは自分だけのものか、何かに流されていないか、立ち止まって考える機会になりました。